教育経済学者である中室牧子さんの著書です。
実は中室牧子さんは私と同じ慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFCと呼んでいます)のご卒業なので、面識はありませんが私の先輩に当たるお方です。
日本銀行を経て現在は慶應義塾大学総合政策学部の教授をされています。
本題に入る前のちょっとした余談
日本銀行に勤めている私の友人に飲み会の席で
「中室牧子先輩に会わせてよ。」
と頼んだら
『雲の上のお方なので無理だよ。』
と言われ、
「そうだよね。」
と妙に納得したのを覚えています。
本当に雲の上のお方ですから^^
しかし、慶應義塾大学は上下の結びつきが非常に強固な性質を持った大学です。
先輩は後輩を大事にし、後輩は先輩を敬っています。
そして、卒業生の作る三田会はとても大きな組織です。
日本全国いや全世界に三田会は存在しています。
もし、私が本気で中室先輩に会わせてほしいと三田会の先輩に頼んだらきっと会えるように取り計らってくれる先輩や同級生、後輩がいるでしょう。
雲の上のお方ですから今現在の私では恐れ多いですが。
将来、先輩と強固に結びつきたいと考えている中高生は、慶應義塾大学を一つの選択肢に入れてみるのも良いのではないでしょうか。
塾長の私が「学力の経済学」を推薦する理由
『学力を伸ばす』という内容の本は巷にあふれています。
そのほとんどは「私の経験によれば・・・」というように、個人の経験に基づいた内容になっています。
塾での私の教育の方針も私が指導してきた何百人、何千人という生徒の傾向を私なりに解釈してきた結果のものとなっています。
しかし、それはしっかりした統計ではなく、「なんとなくそのような傾向」というものに過ぎません。
この書籍は、そのような曖昧なものではなく、しっかりと研究者が統計をとったものを基準にして書かれている本となっています。
もちろん、「経験によると」というものを私は否定しているのではありません。
経験というものもとても大切だと思っています。
わかりやすく解説するために具体例を挙げましょう。
たとえば「私はこのようにして息子2人を東大に合格させた」という本があったとしましょう。
そして、その本では事細かくその2人の息子を東大に合格させるまでの勉強や生活のプロセスが書かれていたとしましょう。
それを読んだ親御さんの子供にそのプロセスを完全に遂行したとして、果たして確実に東大に合格させることができるでしょうか。
答えは、確実に合格できるかはわからないということです。
たまたまその2人の息子が能力があって、東大に合格したのかもしれません。
その2人がどんな勉強や生活をしていても東大に合格していた可能性もあります。
「私はこのようにして息子2人を東大に合格させた」という本のプロセスが、それを読んだ親御さんの子供に合わないかもしれません。
なぜそうなるのかというと、サンプルが少なすぎるからです。
Aさんに合う手法がBさんに合うとは限らないのです。
その点でこの書籍はちょっと違いますね。
何千、何万人という人たちに実験を施し、確実に学力を上げた方法を書いているのです。
Aさんに合う手法がBさんに合うという確率よりも、何千、何万人に合う手法がBさんに合う確率のほうがおそらく絶対に高いですよね。
だからこの本を読む価値があるのです。
『学力の経済学』の内容を少しだけご紹介します
せっかくの良書をご紹介したわけですから、少しだけ中室先輩(勝手に先輩と呼ばせてもらっています(笑))の書籍をご紹介します。
とても気になるというお方はぜひお買い求めください。
子供を勉強させるためにご褒美で釣ってはいけないのか?
『子供を勉強させるためにご褒美で釣ってはいけないのか?』
という疑問は多くの親御さんが抱いている疑問でしょう。
もし、「勉強をしたらご褒美をあげるよ」という提案をしてしまったら、その後ずっとご褒美をあげつづけないと勉強してくれなくなるのではないか。
または、ご褒美にばかり目が行くようになって、勉強が楽しいという感覚を身につけることができなくなってしまうのではないか。
というような親にとっては非常に怖い結果を想像してしまいます。
この点についてもこの書籍では触れられていて、しっかりとした実験によっての証明がなされています。
結果としては、勉強にご褒美をあげることによって、勉強をすることが楽しいという気持ちを失うことはないとしっかりと証明されているようです。
とても安心できる答えが聞けましたね。
勉強すれば将来の収入が高くなるのに、なぜ子供は勉強しないのか?
今一生懸命勉強していれば、将来の収入は高くなるということが研究によって数字で示されています。
それなのになぜ子供は、勉強しないのでしょうか。
この質問に対する答えは、『人間には目先の利益や満足のほうが大きく見えてしまうという性質がある』ということです。
それが子供の勉強を妨げているようです。
つまり、将来のための勉強という苦痛を強いられるより、目先の楽なこと例えばテレビを見たりゲームをやったりすることを選択してしまうということです。
私もこの書籍を読んで、実験をしてみました。
自分の子供に
「今あなたの好きなアイスを食べるなら1つしか食べられないけど、今は我慢して明日になってからアイスを食べるなら2つのアイスを食べられるよ。どっちにする?」
と質問を投げかけたところ、幼児の子供は迷うことなく
『今食べる!』
と答えました。
まさにこのことですね。
子供にとって、将来のための勉強と現在楽をすることを天秤にかけると現在の利益や満足が優先されるのですね。
だから、親としてはご褒美を与えることによって、少しでも勉強させたいということになるのです。
この書籍では『ご褒美にお金をあげることが良いのか』ということまで言及していますので、ご興味があるお方は、書籍を手に取って読んでみてください。
子供の学力を上げるために「テストで良い点数を取ればご褒美」と「本を1冊読んだらご褒美」はどちらが効果的?
子供の将来を考えて、子供に勉強させるために親はご褒美を与えるという手段を使います。
では、子供の学力を高めるためにはどのようにご褒美を与えれば良いのでしょうか。
「テストで良い点数を取ればご褒美をあげるよ」
と
「本を1冊読んだらご褒美をあげるよ」
はどちらが効果的なのでしょうか。
実はこれは海外の研究者が実験によって明らかにしているそうです。
ズバリ、答えは「本を1冊読んだらご褒美をあげるよ」が効果的なご褒美の与え方です。
これは書籍を読んでみてすんなり納得しました。
私なりに解釈してお伝えしますが、
「テストで良い点数を取ればご褒美をあげるよ」
という方法は、学力を上げるための具体的な方策が書かれていません。
つまり、どの教材をどのように勉強すればテストの点数が上がるのかを示していないのです。
ご褒美がもらえるから勉強を頑張るぞ!と思っていても、具体的にどのように勉強をしたら良いかわからないので、成績が上がらないということに繋がります。
逆に「本を1冊読んだらご褒美をあげるよ」という方は、本を読むという具体的な勉強方法が書かれているので、迷うことなく本を読むことができるので、成績が上がりやすということになります。
したがって、子供に勉強をさせて成績も伸ばしたいのであれば、具体的に何をやらせるのかを明確にして、それにご褒美を与えることが一番効果的ということですね。
私の経験でも思い当たる節があります。
一生懸命長時間勉強しているのに、全く成績が上がらない生徒が毎年のようにいました。
そのような生徒の勉強内容を聞いていみると、明らかに勉強の仕方が間違っているという人がほとんどでした。
勉強の仕方を具体的に示してあげることが成績を伸ばすことに繋がると思います。
親自身も勉強の仕方がわからないというときは、学校の先生や塾の先生などに相談してみると良いでしょう。
彼らは想像もできないような勉強法を知っていることがありますので。
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